食品の原材料表示を眺めていると、「アナトー色素」や「ココア色素」といった聞き慣れない名称を目にすることがあります。
どちらも「着色料」と書かれているため、何となく同じようなものに感じてしまいがちですが、実際には由来も性質も、そして食品に与える印象も大きく異なります。
着色料という言葉に対して、漠然と不安を感じる人も少なくありません。しかし、すべての着色料が人工的なものではなく、植物由来の天然色素も多く存在します。
アナトー色素とココア色素は、まさにその代表例です。
ここでは、それぞれの原料・成分・色調・用途を整理しながら、違いや安全性、食品表示を見るときの視点まで、分かりやすく掘り下げていきます。
アナトー色素とは何か
アナトー色素は、熱帯・亜熱帯地域に自生するベニノキ(Annatto tree)の種子の外皮から抽出される天然色素です。 中南米を原産とし、古くから現地では染料や食品着色に利用されてきた歴史があります。
日本では食品添加物として認可されており、「アナトー色素」「アナトー」といった名称で表示されます。 人工合成ではなく、植物由来である点が大きな特徴です。
アナトー色素の色調と特徴
アナトー色素の色は、抽出方法によって若干異なりますが、主に黄色から橙色を呈します。 食品に使うと、自然で温かみのある色合いになり、「おいしそう」「新鮮そう」といった視覚的印象を与えます。
特に乳製品との相性が良く、白一色だと味気なく見えてしまう食品に、ほどよい彩りを加える役割を果たしています。
主成分:ビキシンとノルビキシン
アナトー色素の色の正体は、主にビキシンとノルビキシンという成分です。
ビキシンは油脂に溶けやすい性質を持ち、バターやマーガリンなど脂肪分の多い食品に適しています。 一方、ノルビキシンは水溶性で、飲料や水分の多い食品に使われます。
この2種類を使い分けることで、さまざまな食品に安定した色を付けることができるのです。
アナトー色素の主な用途
アナトー色素は、以下のような食品に幅広く使われています。
・チーズ(チェダーなど)
・バター、マーガリン
・菓子類、スナック菓子
・飲料
また、食品以外にも口紅などの化粧品に使われることがあります。
さらに興味深い点として、アナトーは高価なサフランの代替として、パエリアなどの料理に使われることもあります。 見た目の華やかさを保ちつつ、コストを抑えられる点が評価されています。
ココア色素(カカオ色素)とは
ココア色素は、その名の通りカカオ豆を原料とする天然色素です。 具体的には、チョコレート製造の過程で生じるカカオハスク(外皮)などを活用して作られます。
本来は副産物として扱われがちな部分を有効利用している点でも、近年注目されている色素です。
ココア色素の色調と印象
ココア色素が表現するのは、落ち着いた茶色です。 この色は「香ばしさ」「コク」「深み」といったイメージを連想させ、食品の風味を視覚的に補強します。
単に色を付けるだけでなく、「チョコレートっぽさ」「焼き色らしさ」を自然に演出できる点が大きな魅力です。
主成分:ポリフェノール
ココア色素の主成分はポリフェノールです。 ポリフェノールは抗酸化作用を持つことで知られ、健康イメージとも親和性があります。
もちろん、着色目的で使われる量はごくわずかですが、「植物由来」「カカオ由来」という点が、消費者に安心感を与えています。
ココア色素の用途の広さ
ココア色素は非常に汎用性が高く、以下のような食品に使われています。
・ココア飲料、チョコレート製品
・製菓、製パン
・アイスクリームなどの冷菓
・たれ、ソース、スープ
・調味料、即席食品
「茶色であってほしい食品」に自然に溶け込むため、気づかないうちに口にしているケースも多い色素です。
アナトー色素とココア色素の違い

ここまで見てきたように、両者は同じ「天然着色料」でありながら、性質は大きく異なります。
原料の違い
アナトー色素はベニノキの種子由来、 ココア色素はカカオ豆の外皮由来です。
植物の種類も、育つ地域も、文化的背景も全く異なります。
色と役割の違い
アナトー色素は「黄色〜橙色」で明るさや華やかさを演出します。 一方、ココア色素は「茶色」で深みやコクを表現します。
どちらが優れているという話ではなく、食品の性格に合わせて使い分けられているのが実情です。
安全性と表示を見る視点
どちらも日本で食品添加物として認可されており、通常の摂取量で健康に問題が生じることはありません。
「着色料=危険」と一括りにするのではなく、天然由来かどうか、何の目的で使われているかを見ることが大切です。
まとめ
アナトー色素とココア色素は、いずれも植物由来の天然色素でありながら、原料・色・役割は大きく異なります。
アナトー色素は黄色〜橙色で食品を明るく彩り、 ココア色素は茶色で香ばしさや深みを演出します。
原材料表示にこれらの名前を見つけたとき、「何だか不安」と感じる必要はありません。 むしろ、食品の見た目や印象を自然に整えるための工夫の一つだと捉えると、少し見方が変わるはずです。
成分を知ることは、食品を選ぶ目を養うことにもつながります。 次に買い物をするとき、ぜひ原材料表示をもう一度、落ち着いて眺めてみてください。

