会社員として働いている中で、うつ病や適応障害などの「心の病」と診断され、休職を余儀なくされるケースは決して珍しくありません。
その際、必ず出てくるのが「生活費はどうなるのか」「正社員と契約社員・派遣社員で扱いは違うのか」という現実的な疑問です。
ネット上には断片的な情報が多く、「正社員だけが守られている」「派遣は対象外」といった誤解も少なくありません。
この記事では、正社員の場合と契約社員・派遣社員の場合という大枠の違いを軸に、傷病手当金の仕組みと実務上の注意点を整理します。
制度の本質を分かりやすくまとめます。
傷病手当金とは何か|雇用形態より重要な視点
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった際に、生活を支えるための公的制度です。
ここで最も重要なのは、傷病手当金が「雇用形態の制度」ではなく、健康保険の制度だという点です。
つまり、正社員かどうかよりも、どの健康保険に加入しているかが判断基準になります。
うつ病、適応障害、不安障害などの精神疾患も、医師が「労務不能」と判断すれば、原則として対象になります。
正社員の場合|最もイメージしやすいケース
正社員の場合、ほとんどのケースで社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しています。
そのため、条件を満たせば傷病手当金の対象になるのが一般的です。
正社員が傷病手当金を受け取れる基本条件
・業務外の病気やケガであること
・医師により労務不能と判断されていること
・連続3日間を含め4日以上仕事を休んでいること
・休業期間中に給与が支払われていないこと
これらを満たせば、正社員であること自体が不利に働くことはありません。
正社員が勘違いしやすいポイント
「休職=会社から給料が出る」と思われがちですが、法律上、会社に給与支払い義務はありません。
多くの場合、会社の給与ではなく、傷病手当金によって生活を維持する形になります。
この点を知らないまま休職に入ると、想定以上に手取りが減り、精神的な負担が増すこともあります。
契約社員の場合|正社員と制度上の違いはあるのか
契約社員の場合、「正社員ではないから対象外では?」と不安に感じる方が多いですが、制度上の扱いは大きく異なりません。
ポイントは、社会保険に加入しているかどうかです。
社会保険加入の契約社員
週の労働時間や勤務日数が一定基準を満たし、健康保険に加入している契約社員であれば、傷病手当金の条件は正社員と同じです。
雇用期間の定めがあること自体は、支給の可否に直接影響しません。
注意すべき「契約満了」のタイミング
契約社員で特に注意が必要なのが、契約満了の時期です。
休職や療養を始める前に契約が終了してしまうと、健康保険の資格を喪失し、傷病手当金を受けられない可能性があります。
このため、診断書の取得や会社への相談は、できるだけ早い段階で行うことが重要です。
派遣社員の場合|派遣元がすべての基準になる
派遣社員の場合、少し構造が分かりにくくなります。
重要なのは、派遣先ではなく、派遣元会社との雇用関係です。
派遣社員が傷病手当金を受け取れる条件
・派遣元の社会保険に加入している
・派遣元との雇用関係が継続している
この2点を満たしていれば、派遣社員でも傷病手当金は支給対象になります。
派遣という働き方自体が不利になるわけではありません。
派遣切り・雇止めとの関係
派遣契約が終了し、派遣元との雇用関係も終了すると、その時点で健康保険の資格を失います。
ただし、一定条件を満たしていれば、退職後も傷病手当金が継続支給されるケースがあります。
この点を知らずに自己都合で退職してしまうと、本来受け取れたはずの給付を失うことがあります。
正社員・契約社員・派遣社員に共通する現実的な注意点

どの雇用形態であっても、共通して注意すべき点があります。
申請しなければ1円も出ない
傷病手当金は自動で支給されるものではありません。
医師の証明、会社(または派遣元)の記入、本人申請が揃って初めて支給されます。
社会保険料・住民税は別問題
傷病手当金が支給されていても、社会保険料や住民税の支払い義務は原則として続きます。
この点を見落とすと、「手当が出ているのに生活が苦しい」という状況に陥りがちです。
まとめ
傷病手当金は、正社員だけの特権ではありません。
契約社員や派遣社員であっても、社会保険に加入していれば、制度上はほぼ同じ条件で保護されます。
一方で、契約満了や雇止めのタイミング次第では、受給の可否が大きく変わるのも事実です。
重要なのは、「雇用形態で諦めないこと」と「制度を正しく知った上で動くこと」です。
だからこそ、正社員・契約社員・派遣社員それぞれの立場から、正確に整理して理解する価値があります。


