扨(さて)とは?意味・語源・使い方を例文付きで解説
文章や手紙の中で、突然「扨」という漢字を見かけ、読み方が分からず戸惑った経験はないでしょうか。「扨」は「さて」と読み、話題を切り替えたり、次の行動へ移ったりするときに使われる言葉です。現在はひらがなで「さて」と書くのが一般的ですが、古い文章や改まった手紙、小説などでは「扨」と表記されることがあります。ちなみに、「扨」「扨て」は、日本で作られた国字(和製漢字)です。
本記事では、「扨」の読み方と基本的な意味、漢字の成り立ち、具体的な使い方を例文とともに解説します。「扨置き」「扨は」などの関連表現や、「ところで」「では」との違いも整理していきます。
扨の基本の意味
「扨」は「さて」と読み、話題を切り替えたり、前の内容を受けて次へ進んだりするときに使う言葉です。品詞としては、主に接続詞や感動詞として使われます。「扨」は日本で作られた国字であり、画数は6画、部首は手偏です。
接続詞として使う場合には、大きく分けて三つの意味があります。一つ目は「ところで」のように、それまでの話を終えて新しい話題へ移る用法です。二つ目は「そうして」「それから」のように、前述の出来事を受けて話を続ける用法です。三つ目は「しかし」「ところが」に近く、前の内容とは異なる現実や問題を示す用法です。
また、感動詞として「扨、どうしたものか」「扨、そろそろ出かけよう」のようにも使われます。この場合は、考えを整理したり、気持ちを切り替えて行動を始めたりする場面で用いられます。
扨の成り立ち・語源
「扨」は、もともと日本語として使われていた「さて」という言葉に当てるために作られた国字です。中国から伝わった漢字をそのまま使ったものではなく、日本語の「さて」を文字で表現するために日本で用いられるようになった漢字と考えられています。
漢字の形は「手」を表す手偏と「刄」から構成されています。ただし、「手で刃物を扱う」という意味から「さて」が生まれたわけではありません。「扨」は「扠」という漢字の字形が変化したものとされ、発音や用法をもとに日本語の「さて」へ当てられたと考えられています。表記には「扨」のほか、「扠」や「偖」が使われることもあります。
言葉としての「さて」は、副詞の「さ」と接続助詞の「て」が組み合わさったものと説明されます。「さ」は「そのように」「そう」という意味を持ち、「て」は前後の事柄をつなぐ働きをします。そのため、もともとは「そうして」「そのような状態で」という意味を持ち、そこから話を先へ進めたり、別の話題へ移したりする用法が発達したと考えられます。別の辞書では「然ありて」、すなわち「そうであって」という意味に由来するとの説明もあります。
現在の日常的な文章では「さて」とひらがなで書くことが多く、「扨」はやや古風で文学的な印象を与えます。古い手紙、随筆、小説、歴史的な文章などで使われると、文章に落ち着きや格式を持たせる効果があります。
扨の使い方と例文
話題を切り替える場合
それまで続いていた話をいったん終わらせ、新しい話題に移るときに使います。「ところで」に近い用法であり、会議や手紙、説明文などでも使えます。
例文:扨、ここからは来年度の事業計画について説明します。
例文:扨、長くなりましたが、本題に入りましょう。
前の内容を受けて次へ進む場合

前に述べた出来事を受け、「そうして」「それから」という流れで次の出来事を説明するときにも使われます。
例文:必要な資料をすべて机に並べ、扨、作業を始めようと椅子に座った。
例文:目的地には無事到着した。扨、問題はここから何をするかである。
実行の難しさや問題を示す場合
口で述べた内容と現実との間に差があることを示す場合には、「しかし」「ところが」に近い意味になります。
例文:計画を立てるのは簡単だが、扨、実行するとなると多くの問題がある。
例文:商品には興味がある。扨、実際に購入するかと聞かれると迷ってしまう。
考えたり行動を始めたりする場合
感動詞として使う場合は、考えをまとめるときや、次の行動に移るときの掛け声のような働きをします。
例文:扨、これからどうしたものだろう。
例文:扨、休憩は終わりにして仕事へ戻ろう。
現代の一般的な文章では「さて」と書けば十分です。「扨」を使うと古風で硬い雰囲気になるため、読みやすさを重視する文章ではひらがな、文学的な趣を出したい文章では漢字表記というように使い分けるとよいでしょう。
扨の熟語・関連語
「扨」は単独で接続詞として使われることが多く、一般的な二字熟語は多くありません。その一方で、「扨」を含む連語や派生表現には、現在でも使われているものがあります。
扨置き・扨措き(さておき)
「扨置き」は、ある話題をいったん脇へ置き、別の事柄へ移ることを表します。通常は「さておき」または「それはさておき」と書かれます。
例文:細かな問題は扨置き、まずは全体の方針を決めよう。
扨置く・扨措く(さておく)
「扨置く」は、ある問題や話題をひとまず取り上げず、保留することを意味します。「置く」だけでなく、「措く」と表記される場合もあります。
例文:費用の問題は扨置いて、実現できる方法を考えてみたい。
扨は(さては)
「扨は」は、前の発言や状況から何かを推測したときに使われます。「それでは」「そうすると」「もしや」といった意味を持つほか、物事を付け加える表現として使われる場合もあります。
例文:扨は、最初から事情を知っていたのですね。
扨も(さても)
「扨も」は「それにしても」「それはそうと」という意味のほか、驚きや感心を表す「なんとまあ」という意味でも使われます。現代では古風な表現ですが、文学作品や時代を感じさせる文章で見かけることがあります。
例文:扨も見事な庭園である。
さてさて
「さてさて」は、困惑、驚き、感心などを表す言葉です。「なんとまあ」「困ったものだ」という気持ちを含むことがあります。また、話の続きを促す「それからどうした」という意味でも使われます。
例文:さてさて、思いがけない展開になったものだ。
扨と似た言葉との違い
「扨」のように、現代ではひらがなで書かれることの多い古風な接続表現には「将又(はたまた)」もあります。「それとも」「あるいは」という選択や疑問を示す言葉であり、話題を切り替える「扨」とは役割が異なります。詳しくは、将又(はたまた)の意味・語源・正しい使い方で解説しています。
扨と「ところで」の違い
「ところで」は、主に話題を大きく切り替えるときに使います。一方の「扨」は話題の転換だけでなく、前の内容を受けて話を進める場合や、行動を開始する場合にも使える点が違いです。
「ところで、明日の予定は決まりましたか」は明確な話題転換です。「扨、明日の予定を決めましょう」とすると、次の議題や行動へ移る印象が強くなります。
扨と「では」の違い
「では」は、会話や作業を区切り、次の段階へ進むときに使われます。「では、始めます」のように、事務的で簡潔な印象があります。「扨」は同じように行動の開始を表せますが、少し考えを整えたり、気持ちを切り替えたりする間を感じさせます。
扨と「それでは」の違い
「それでは」は、前に述べられた条件や事情を直接受けて、判断や行動へ進む表現です。「参加者がそろいました。それでは始めます」のように、前後の関係が明確です。「扨」は前の内容とのつながりが弱い場合でも使え、独立した話題転換にも利用できます。
前の内容を受けて後の結論へ進む表現には「従而(したがって)」もあります。ただし、「扨」が話題や行動を次へ進めるのに対し、「従而」は原因や根拠から結果を導く言葉です。詳しくは、従而(したがって)の意味と漢文での使われ方もあわせてご覧ください。
扨と「しかし・ところが」の違い
「しかし」や「ところが」は、前の内容と反対の事実を示す逆接の表現です。「扨」にも現実的な困難を示す用法がありますが、完全な反対を強調するというより、実際の問題を検討する段階へ移るという柔らかな働きを持っています。
「説明は簡単だ。しかし、実行は難しい」では明確な対立が示されます。「説明は簡単だが、扨、実行するとなると難しい」では、実行について改めて考える流れが強くなります。
扨と「はて」の違い
「はて」は、疑問、困惑、不審などを表す感動詞です。「はて、どこに置いただろう」のように、分からないことを考える場面で使われます。「扨」は疑問を表すこともありますが、基本的には話題や行動を次へ進める言葉です。読み方と響きは似ていますが、役割は異なります。
まとめ
「扨」は「さて」と読み、話題の転換、前の内容からの継続、次の行動への移行などを表す国字です。現在はひらがな表記が一般的ですが、漢字で書くと古風で文学的な雰囲気が生まれます。「扨置き」「扨は」「扨も」などの関連表現もあるため、それぞれの意味と使われる場面を区別して理解しておきましょう。
このほかにも、現代では見かける機会の少ない漢字や、読み方の難しい言葉を知りたい方は、漢字・難読語の意味と使い方まとめ|語源と例文で学ぶも参考にしてください。

