従而(したがって)の意味とは?漢文の「したがひて」も解説

漢字

従而の読み方と使い方|漢文「したがひて」や類語との違い

従而」は「したがって」と読み、前に述べた事柄から、後に続く結論や結果を導き出す言葉です。現在では「したがって」または「従って」と書くのが一般的ですが、明治・大正・昭和初期の文章や古い評論、小説などでは「従而」という漢文調の表記が見られます。

一方、漢文の書き下し文では、「従」「したがひて」と読むことがあります。接続詞の「従而」と、漢文で動詞として使われる「従ひて」は似ていますが、文法上の働きは同じではありません。この記事では、従而の意味、成り立ち、使い方、漢文との関係、似た言葉との違いを詳しく解説します。

従而の基本的な意味

従而は前の事柄を理由や前提として、当然導かれる結果や結論を示す接続詞です。「それゆえ」「だから」「その結果」「よって」などに近い意味を持っています。

たとえば、「今日は交通機関が運休している。従而、予定していた会議は延期する」という文章では、交通機関の運休が理由となり、会議の延期という結論が導かれています。

ただし、従而は単に出来事を順番に並べる言葉ではありません。「朝食を食べた。従而、家を出た」のように、時間的な前後関係しかない場合には不自然になることがあります。前の内容と後の内容の間に、原因と結果根拠と判断条件と結論という論理的なつながりが必要です。

現代の文章では、難しい漢字表記である「従而」よりも、ひらがなの「したがって」や「従って」が広く使われています。従而は、古風で硬質な印象や、漢文調の雰囲気を持つ表記といえるでしょう。

従而の成り立ち・語源

「したがって」は「従う」から生まれた言葉

「したがって」という言葉は、動詞「従う」の連用形である「従い」に、接続助詞の「て」が付いた形から成立しました。本来は「あるものの後についていく」「命令や方針に従う」という意味でしたが、そこから意味が広がり、前の事柄に沿って後の結果が生じることを表す接続詞になりました。

古い日本語では「従う」は「したがふ」と書かれ、その連用形は「したがひ」です。そのため、「従って」に相当する古い表現は「したがひて」となります。歴史的仮名遣いでは「ひ」と書きますが、現代語では「い」と発音し、「したがいて」となります。

「而」は前後をつなぐ漢文の文字

「而」は「しかして」「そして」「しかるに」「しかれども」などと読み、漢文では前後の語句や文章をつなぐ働きを持つ文字です。順接だけでなく逆接を表す場合もあるため、文脈によって意味を判断する必要があります。

従而という表記では、「従」が「従う」「前の内容に沿う」という意味を持ち、「而」が前後を接続する役割を担っています。そこから、「前の事柄に従って、その結果として」という意味を表すようになりました。

なお、古い文章では「従而」の旧字体として「從而」と書かれることもあります。「」は「従」の旧字体であり、基本的な意味や読み方は変わりません。

漢文の「したがひて」と従而の違い

漢文の書き下し文では、「従」という漢字を動詞としてしたがひてと読むことがあります。

たとえば、韓愈の『師説』に見られる「従師而問焉」は、書き下し文では「師に従ひて問へり」となります。現代語では「師に付き従って質問した」という意味です。

この場合の「」は「付き従う」という動詞であり、「」は前後をつなぐ助字として扱われます。書き下し文では「而」を独立して読まず、前の「従」に「ひて」という送り仮名を付けて、文章の流れを表しています。

つまり、接続詞の「従而」は「したがって」「それゆえ」という意味ですが、漢文の「従ひて」は、文脈によって付き従って」「教えに従って」「後についてという具体的な動作を表します。表面上は似ていても、文中での役割を区別することが重要です。

従而の使い方と例文

従而は、前に示した理由や条件を受け、後に結論や判断を述べるときに使います。古い評論や文学作品では漢字で表記されることがありますが、現代のビジネス文書や論文では「したがって」と書く方が読みやすいでしょう。

原因から結果を示す例文

例文:この地域では昨夜から激しい雨が続いている。従而、河川の増水には十分な警戒が必要である。

激しい雨という原因を受けて、河川への警戒が必要だという結論を導いています。

条件から判断を示す例文

例文:応募には三年以上の実務経験が必要と定められている。従而、現時点では私は応募条件を満たしていない。

応募条件を前提として、自分が対象外であるという判断を示しています。

調査結果から結論を導く例文

例文:調査対象者の多くが現在の制度を理解していなかった。従而、説明方法そのものを見直す必要がある。

調査で判明した事実を根拠として、改善策を提示する使い方です。

古風な文章で使う例文

例文:彼の主張には十分な証拠がなく、論理にも一貫性がない。従而、その説を直ちに信用することはできない。

「従而」と漢字で書くことで、評論や論説のような硬く重みのある印象になります。ただし、一般向けの記事や案内文では難読表現と受け取られる可能性があるため、通常は「したがって」と書く方が適切です。

従而の熟語・関連語

ここでは、従而の言い換えではなく、「従」や「而」が持つ意味と関係の深い熟語を紹介します。

従順(じゅうじゅん)

人の命令や意向に逆らわず、素直に従うことです。「従順な態度」「指示に従順に従う」のように使われます。従而の「前の内容に沿う」という感覚と共通していますが、従順は主に人の性格や態度を表す言葉です。

服従(ふくじゅう)

他人の命令や権力に従うことです。従順よりも強制力や上下関係を感じさせる場合が多く、「命令に服従する」「権力への服従」のように使われます。

追従(ついじゅう・ついしょう)

「ついじゅう」と読む場合は、他人の後について従うことを意味します。「ついしょう」と読む場合は、相手の機嫌を取るために、お世辞を言ったり同調したりする意味になります。読み方によって意味が変わるため注意が必要です。

従属(じゅうぞく)

中心となるものや力の強いものに付き従い、その支配や影響を受けることです。「大国に従属する」「主節に対する従属節」のように、政治や文法など幅広い分野で使われます。

而して(しかして)

前の文章を受けて次の内容へ進む接続詞で、「そうして」「そして」という意味があります。「而」の接続する働きが直接表れた言葉であり、従而と同様に古風で漢文調の印象を持っています。

従而と似た言葉との違い

従而と「そのため」の違い

「そのため」は、ある出来事によって実際に結果が生じたことを説明する際に適しています。一方、従而は、事実や条件を根拠として、話し手が論理的な判断や結論を導く場面で使われやすい言葉です。

「大雪が降った。そのため、電車が遅れた」は現実に生じた結果を表します。「大雪が予想されている。従而、早めに帰宅すべきだ」は、予想を根拠に判断を導いています。

従而と「だから」の違い

「だから」は日常会話でも頻繁に使われる、口語的で直接的な表現です。従而は文章語としての性格が強く、論文、評論、説明文など、論理的に内容を組み立てる場面に向いています。

従而と「故に」の違い

「故に」は「ゆえに」と読み、原因や根拠から結論を示す点では従而とよく似ています。ただし、「故に」は従而以上に硬く、数学の証明、哲学的文章、格調を意識した文章などで使われる傾向があります。

従而と「よって」の違い

「よって」は「以上の理由によって」という意味を持ち、判決文、規則、公式発表などでも使われます。「従而」が前の内容から論理的に結論を導くのに対し、「よって」は決定や処置を正式に示すニュアンスが強い言葉です。

古い文章で使われる接続表現には、「それとも」「あるいは」という意味を持つ「将又(はたまた)」もあります。従而が結論を導く言葉であるのに対し、将又は別の選択肢や可能性を付け加える言葉です。詳しくは、将又(はたまた)とは?意味・語源・正しい使い方を例文付きで分かりやすく解説をご覧ください。

まとめ

従而は「したがって」と読み、前の事柄を理由や前提として、後の結果や結論を導く接続詞です。現在は「したがって」や「従って」と書くのが一般的ですが、古い評論や文学作品では「従而」という漢文調の表記も見られます。

漢文の「従ひて」は、「付き従って」「教えに従って」という動作を表す場合があり、接続詞の従而とは文法的な役割が異なります。前後の論理関係を示す接続詞なのか、具体的に従う動作を表すのかを見分けることが、正しい理解につながります。

従而のような古い漢字表記や、現代では読み方が分かりにくい言葉については、漢字・難読語の意味と使い方まとめ|語源と例文で学ぶでも体系的に紹介しています。

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